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最近、あまり創作についての記事を書いていないので、久々に白武先生のエセ科学をしたためたいと思う。

先日、更級と飯を食いに行った時に風の軌跡Ⅱとか書きてぇという話になりまして。それ以来、少しばかり異世界の生態系に思いを馳せる時間が多くなりました。もともと、辺境博物誌というツクール作品を水面下で作製していたこともありまして、なおのこと。

白武は自然大好きっ子なので、動植物関係は日頃からネタに使えないかと調べてはいるんですが、人間の研究は日進月歩。新しい発見や学説が出るたびに設定が変わるものもたくさんあります。そりゃあもう山のように。

そもそも、この話題の発端が「ゴキブリに種を散布してもらう植物」のニュースだったんですよね。熊本大学の。やっぱり更級とは同じものに関心を持つんだな。付き合いの長さを感じさせます。

さて、そんなこんなで今日はドラゴンのお話。


■そもそもドラゴンとは。

そもそも論において、エインセル・サーガ・ワールドの竜は生態系から切り離された、いわゆるカミサマに近いものです。作中においてはきっと書けないであろう宇宙の真実に属する存在の一つです。

とはいえ、やっぱりファンタジーの悪役と言えばドラゴンだよねってことで、普通の敵としても存在してほしいという作者のわがままによって「亜竜」という存在が産まれました。ファンタジー界隈ではおなじみのワイバーンやドレイクといったやつらですね。

なので、亜竜に関する設定は生態系に属したものでなくてはなりません。風の軌跡でワイバーンとドレイクの関係については一度書きましたっけ。


■巨体の課題

竜はあらゆる神話に登場します。姿かたちはそれぞれの民族性で脚色されますが、爬虫類の神格化というのは共通です。恐竜のイメージが中生代の哺乳類から連綿と受け継がれているからだとか、爬虫類が身近に存在する(脱皮や生涯成長し続ける特性から)神秘的な存在だからだとか、出土した恐竜の化石からインスピレーションを受けたとか……まあ、理由は様々です。

真偽はさておいて、地球上に恐竜という巨大な生物がいたというのは事実。なので、ドラゴンも完全な空想の存在とは言えません。つまるところ、恐竜という生物をベースにドラゴンを考察するのが一番の近道のような気がします。

西洋ドラゴンと言えば、巨大で、翼を持ち、火を吹くトカゲというイメージですね。

まずは巨大というところに焦点を当てて考えてみます。

素朴な疑問ですが、どうして恐竜は体が大きかったのか。ちょっと調べたところ、世界最大の恐竜はパタゴティタン・マヨラムと呼ばれる種だそうです。全長37m、体重69t。現代の地球にこれほど巨大な生物は存在しません。

どうしたら、こんなにも大きな体になるのでしょうか。これには複数の要因が働いたと考えられています。

その一、体温。

動物は恒温動物と変温動物に分類されると学校では習いましたが、生物の区分としては適切ではないようです。現在では内温動物、外温動物と言うそうな。

内温動物は体温調節のため、代謝によって生ずる熱を利用できるもの。
外温動物は体温調節のため、日光などの外部熱源を利用するもの。

じゃあ、恐竜はどっちなのか。従来は変温動物と考えられていますが、恒温動物だったという説もあり、最近では羽毛が生えている化石も見つかったようなのです。

専門家ではないので何とも言えませんが、ここでは従来の説……というよりも、「外温動物」として考えてみます。

熱を作り続けないといけない内温動物と違って、外温動物はエネルギー効率がいいそうです。なので、恐竜は身体が大きくても少ない食事でそれを維持でき、かつ、余剰のエネルギーを成長に回すことができました。

さらに慣性恒温性によって、表面積の大きな個体ほど熱が冷めにくい。巨体でありながら、その維持にかかるコストは恐ろしく低燃費だったと推測されます。


その二、生涯成長の特性。

個体差はありますが、爬虫類は生存が許される限り成長するそうです。生きていればどこまでも大きくなるわけですね。これは単純。

じゃあ、なんで僕たち哺乳類の成長が止まるかというと、歯に秘密があるらしい。永久歯が生え揃い、歯列が完成すると顎の成長が止まる。そして、それに合わせて全体のバランスが崩れないよう、他の部分も成長が止まるんだってさ。


その三、強力な呼吸器官

身体が大きすぎると血液循環の問題が出てきます。人間にも巨人症という病気がありますが、身体の大きさに比べ内臓はそのままなので、血流を細部に行き渡らせることができず、さまざまな疾病を招くのだそうな。

では、体の大きな恐竜はどうやって問題を解決したのかというと、気嚢という肺を補助する器官があって、効率的に酸素を取り入れることができたらしい。つまり、酸素を全身に行き渡らせることが可能だったからこそ巨大化できたとも言える。


■飛行の課題

動物が飛翔するには、単純に体重よりも翼が生み出す揚力が上回らなければならない。

さて、では史上最大級の翼竜、ケツァルコアトルスのデータを見てみよう。あ、FGOのケツ姉のことじゃないっすよ。ムーチョムーチョ。

翼を広げた全長約12m、体重約70kg。……あれ? 思ったより小さい? 軽い?

全長はともかく、体重は成人男性くらいじゃないか。つまり、ドラゴンの普遍的イメージである「陸上恐竜に翼を付けたような」状態では飛べないのだ。まあ、当たり前ですが!

しかし、ドラゴンが小さくて軽いというのもいかがなものか。ちょっとばっかり脆弱ではなかろうか。従来のイメージ通りドラゴンに飛翔させるにはどうしたらいいか。重量数トンの生物が飛べるわけないじゃんなんて冷たい現実は見たくないわけです。

なので、相対的に体重を軽くしてみましょう。体内に水素・ヘリウム・メタンあたりの軽い気体を生成、蓄積する器官があれば、浮力によって自重はある程度の軽減が期待できます。

気球の原理で体内に貯めた空気を熱して……とも考えたけれど、生物の限界体温は45℃らしいので無理。やはり、空気より軽い気体の蓄積による自重軽減しているあたりが妥当な設定か。……言っちゃダメ。ヘリウム風船一個で5gくらいしか浮き上がらないなんて言っちゃダメ。1000kgの身体を浮かせるのに20万個の風船が必要だ、なんて言っちゃダメなんだから!



■火を吹く(ドラゴンブレス)

以前は超音波による分子加速とか、体内の電子レンジ化しての分子加速とか考えていましたが、ここまで来ると浮力に使っているガスを利用して燃焼させた方が合理的か。

そして、吐きつくしたらしばらく飛べなくなるわけだ。きっと奥の手なんでしょうね。


■おまけ

爬虫類の生涯成長する特性を考えると、”ガスの浮き袋”の補助があっても揚力が自重を上回ることができなくなり、飛べなくなることが想定されます。
そうなった個体は老成体と呼ばれ、飛べない代わりに陸戦では最強の存在になる……とか面白いですね。
最終的には地を這うことになるので足や手は退化せず、そのまま残っているものと推測されます。


まあ、長ったらしくいろいろ書きましたが、小説に必要なのはリアルではなくリアリティ。
ファンタジー作品の科学的な解釈は大好きですが、読者に「おお、ありえるっぽい」と思わせる程度の設定があればいいのではないでしょうか。

魔法だから、とか、こういう世界だから、という理由でもいいのでしょうけどね。

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