日記、ところにより妄想。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
『いっちねんせー、に、なったらー♪』
……どこからか歌声が聞こえてくる。 誰でも一度は聞いたことがある童謡だ。一年生になったら、ともだち100人できるかな。歳を重ねる喜びと、これから待っているであろう輝かしい未来に思いを馳せる希望の歌。 この歌は、あの子の願望の表れだ。一年生になることも、友達を作ることもできなかった哀れな少女の、こうなりたかったという願いだ。 日を跨ぐごとに声が増える。日付が変わるたびに華やかになる。繰り返し繰り返し唱えられるそれは、まるで呪いのよう。 合唱の中に、たかなちゃんの声が混じっているのがわかった。 たかなちゃん。私のお姉ちゃんの娘。ちっちゃくて、素直で、今年小学生に上がったばかりの、かわいいかわいい姪っこちゃん。 笑った顔を見ると、一緒に笑いたくなる。泣いている顔を見ると、守ってあげたくなる。 生まれたばかりのあの子を見て、私は子どもに関わって生きたいと思った。一生懸命勉強して、ピアノも弾けるようになって、大学を卒業したら保母さんになろうと決めた。 子どもは可愛いだけじゃない。きっと想像の何倍も手がかかるんだろう。 けど、それでもやっぱりあの笑顔を、無垢な命の輝きをこの手で育めるなら、それはとっても幸せなことなんだと思う。 そして、いつか私も新しい命を――可愛い可愛い赤ちゃんを産みたいと夢見ていた。 でも―― 行方不明になる少女たち/現代の神隠し/夜の街を飛行する何か/首のない躰/採石場/洞窟/並べられた幾つもの脳缶/迫る鋏/高笑いする男/宙を舞う視界/鮮血/鮮血/鮮血/鮮血/どぽんと、液体の中に沈められるワタシ―― ここは死後の世界? それとも夢の中? 生きているの? 死んでいるの? 今の私にはわからない。今の私にはどうでもいい。 だって、私は。なぜなら、ワタシは。 『さくらこせんせーも、いっしょにうたお?』 ――ワタシは保母さんになれたのだから。 声に誘われ、ワタシも合唱の輪に入る。ああ、ピアノがあれば、躰があれば伴奏してあげるのに。せめて、みんなが楽しくなるように声を張り上げよう。 ワタシが歌い始めると、それに合わせてみんなが声を上げた。うん。今日も元気いっぱいだ。明日はもっと賑やかになるだろう。それこそ、三番の歌詞のように、世界を震わせるほどに。 ワタシは歌い続ける。いつまでもいつまでも。この久遠に続く夢の中で。 PR |
カレンダー
最新コメント
[10/27 白武士道]
[10/26 上村]
[11/22 MariahSharpe]
[09/20 白武士道]
[09/19 上村]
最新トラックバック
プロフィール
HN:
白武士道
年齢:
38
HP:
性別:
男性
誕生日:
1985/12/07
趣味:
絵画、読書、小説執筆
自己紹介:
F県に棲息するナマモノ。
創作家になれるよう、亀の歩みで成長中。
ブログ内検索
|