日記、ところにより妄想。
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盟友、上村氏も小説を発表したわけで、こちらも負けてはいられない。
そんなわけで、駆け足で4/4を更新。 さあ、これにて少女剣聖、一番勝負「陽炎の太刀」――終幕。 大幅な加筆修正と、二番勝負を待て。 余談。 舞台はまたも辺境都市アシュランへ。 アシュランを書くのは何年ぶりか。風の軌跡以来か。 とはいえ、作中の年代が違うから、あの冒険者たちには逢えないけれども。 4/4 「まったく情けない。何という様か。よもや一太刀も交えることなく、敗北しようとは」 試合の結果に、バーウェル卿は失望も露わに口を開いた。 再び通された客間にはミリアルデとイルザ、ベルナ、その上司である無精髭の男が伯爵を面前に控えている。 「面目次第もございません」 ベルナは深々と頭をたれた。 「隊長、そちも部隊を預かる身として、何か言うことがあるか?」 矛先を向けられ、無精髭の男は困ったように頭を掻く。 「いや、残念な結果でありましたな。とはいえ、うちのベルナが、ただ棒立ちして負けることはありますまい。言い分を聞いてみてもいいのでは?」 「……ふむ。ベルナ、面を上げよ。何か申し開きがあるなら、言ってみるがいい」 「……恐れながら。自分でも信じられませぬが、試合の最中、ミリアルデ殿がまるで陽炎のように忽然と消えたのでございます。目を凝らせば凝らすほど姿が霞んでゆき、やがては見えなくなったのです」 ベルナの言葉にバーウェル卿は声を荒げた。 「そんな馬鹿なことがあるかっ。現に、わしの目には、ミリアルデ殿ははっきりと映っておったぞ。言い訳なら、もっとましな言い訳をしたらどうだ」 「……いや、ただの世迷言ではないかもしれません」 無精髭をさすっていた隊長が、伯爵の叱責を遮った。 「剣の極地とは自然との合一と言います。極限まで研ぎ澄まされ、大気に溶け込んだミリアルデ嬢の気配が、ベルナの知覚を狂わせた、とも考えられます。太刀を構えた彼女は、対峙する者の目には風景の一部に映ったのでしょう」 「……ほう、まことか?」 伯爵は興味が湧いたのか、穏やかに問い返す。 「まあ、ただの勘ですがね」 「では、当人に問うてみるとしよう。ミリアルデ殿、あれは何と言う秘剣じゃ?」 「先程の技は、そちらの隊長殿が仰ったとおりです。剣を通じて己を森羅の一部と化し、相対する者の視覚を欺く構えにございます。特に名前などありませんが、皆様がそう仰られるのであれば、陽炎の太刀とでも名付けましょうか」 ミリアルデが甲冑を纏わなかった理由の一つは、この太刀を繰り出すためにある。加工された金属は自然界には在らざるもの。鎧は森羅合一を果たすのに不都合なのだ。 バーウェル伯爵は感じ入ったように何度も頷いた。 「ふうむ。陽炎の太刀、か。見事なものじゃ。是非ともヴェラスに滞在し、我が家臣に、ベルイマンの剣法を伝授してやってはくれまいか」 「有り難いお言葉、恐縮です。されど、私には向かうべき場所がございます。そこへ辿り着くまでは、一所には留まらぬと決めておるのです」 「ほう、それはどこじゃ?」 「アシュランでございます」 アシュランとはレスニア王国の西の果て、レイガンド地方の行政都市のことだ。国境を擁する僻地であるため、辺境都市との呼び名が高い。 「アシュランにはかの有名な闘技場がございます。そこで開かれる武芸大会で、未だ合間見えぬ強敵と戦い、腕を競い合いたいのです」 「なるほどな。そう言われては、留めおくわけにはいかん。そなたの剣は、いずれはこの国の至宝となるであろう。いまは、己が求める戦場に赴き、存分に腕を磨きたまえ」 「はっ。ありがとうございます」 その後、ミリアルデはバーウェル伯よりもてなしを受け、更に三日ほど滞在したのち、ヴェラスを後にした。 若き剣聖は、今日も従者と供にレスニアの空の下を漂流していく。 一番勝負 陽炎の太刀 完 PR |
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1985/12/07
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F県に棲息するナマモノ。
創作家になれるよう、亀の歩みで成長中。
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