日記、ところにより妄想。
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F県立水馬高校。――放課後、美術部にて。
支倉健一と氷上恭介は今日も今日とて美術的な活動を一切するつもりはなく、部室を有効に活用して娯楽に興じていた。 今は小休止中なのか、お互いにテーブルについて紅茶を飲んでいた。珈琲党が多数を占める美術部では珍しい光景だ。それに加えて、テーブルには菓子が乗っていたと思しき小皿が数枚。 「いやー、あゆみちゃんのケーキ、美味かったな」 ティーカップを傾けながら、恭介。その表情はとても満足げである。 「ああ。彼女にこんな特技があるだなんて意外だったよ」 それにもましてご機嫌なのが健一であった。甘党の彼のこと、予想外の甘味の振る舞いは至福の極みであった。 「お前、あゆみちゃんの女子力馬鹿にすんなよ」 「いや、お前こそあゆみちゃんの何が分かるんだよ」 実に”美術部”らしい会話である。 さて、二人の話から察するに、このティーパーティは倉本あゆみ嬢が企画したもののようだった。しかし、おさげが似合う少女の姿はこの場にはない。 「しかし、俺たちだけで食べるなんて、なんか申し訳ないよな」 「お前に申し訳ないなんて高等な感情があったのか」 「うっせ」 「まあ、でも、その通りだね。せっかく作ってくれたのに、本人は早退しちゃったし。一緒に食べられなかったのが残念だ」 「急用だって?」 「うん。なんか、『また町にカードがぁぁぁ!』とか言ってた」 そうか、と相槌を打って会話を区切る恭介。恐らく、踏み込んではいけないものと察したのだろう。なんつーか、こう、作品の壁とかなんかそういうものを。 「それはそうと、一個余ってるな」 恭介の視線は、テーブルに唯一残ったショートケーキに向けられた。真っ白な生クリームのデコレートと、イチゴの赤の鮮やかさが美しい。 「もう一度言う。一個余ってるな」 「だから?」 「食っていい?」 「断る」 「そう返答してくるのは想定内だ。お前、甘党だもんな。だが、その程度で俺の食い意地が抑えられるとでも?」 「僕の食い意地を舐めるなよ」 「はっ、上等だ! なら、後腐れないよう、こいつで決着だ!」 恭介は拳を握り締める。健一もそれに習った。 「はぁぁぁぁ――! 最初はグゥゥゥゥゥゥ――!!!」 「じゃんっ! けんっ!」 「「ぽぽぽぽーん!!!!」」 えーしー。公共広告機構です。 恭介:チョキ 健一:グー 「勝った!」 「……それはどうかな?」 恭介がほくそ笑む。 「確かに、チョキではグーには勝てない。ハサミで石は切れないからな。だが、そのハサミがエクスカリバーならどうかな……?」 「なん……だと……」 久保帯人先生、ご結婚おめでとうございます。 「エクスカリバーには色々通説があるが、白武士道が高校の時に調べた文献によると、鉄を斬る刃って意味らしいぜ。即ち、石ころの防御など無いも同然だぜ! そのまま貫いて、俺のエクスカリバー!!!」 もはやジャンケンではないが、このままでは健一が負けてしまうのは必定。どうする健一。 「――それだけか?」 今度は、健一がほくそ笑む番だった。 「なに?」 「それだけか、と言った」 健一は、おもむろに告げる。 「僕のグーは……地球だ……」 「ジ・アース!!!!!!」 恭介は吹き飛んだ。最強の聖剣とはいえ、星そのものには勝てぬ。そう。彼では主人公には勝てぬのだ。 「理解したか、主人公は僕なのだと」 それって空夢の最後の選択肢の台詞ですよね。 「さーて。じゃあ、もう一ついただきますかね!」 健一がケーキに手を伸ばしたそのとき、 「あー、よかったー。今回は早めに片付いて。いやー、今年のインフルエンザが〈疫病吐き〉のせいだったなんてねー。なんにせよ、お茶会に間に合ってよかったよー」 と、あゆみ嬢が戻ってきた。 健一は固まった。先ほど恭介を負かした、そのグー(石)のように。 ……なんじゃこりゃ。 PR |
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1985/12/07
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自己紹介:
F県に棲息するナマモノ。
創作家になれるよう、亀の歩みで成長中。
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