日記、ところにより妄想。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 何気なしにフォルダを漁っていたら、随分前に書いたSSを見つけました。 一太刀で人類を滅ぼす方法
世界中の男が彼女を愛していた。 それはとても美しい女だった。
完璧、完全、無欠。なんて陳腐な言葉。きっと万言を費やしても、彼女の美貌を一片たりとも表現できないだろう。彼女を飾るには、人類の言語では力不足だ。 それくらい、女は魅力的だった。 僕も含め、男達はこぞって彼女に求婚した。 ある者は愛の言葉を囁き、またある者は贈り物をして必死にアピールを繰り返す。でも、彼女は誰にもなびかない。何千という愛の言葉も、何万という黄金も、彼女を射止めることはできなかった。 ある時、誰かが尋ねた。どんな男になら嫁ぐのか、と。
彼女は答えた。 「私、強い人が好きなの。嫁ぐなら、世界一強い男の人がいいわ」 かくして、戦いの火蓋は切られた。
まずは隣人同士で殺し合い、次は勝ち残った者同士が殺し合う。 争いの波は瞬く間に世界中に伝播し、地上を戦乱が包んだ。 「惑わされてはいけない。その女は、人の世を滅ぼすための悪魔の先兵だ」 そう訴えた賢者がいたが、彼女を愚弄した罪で即座に殺された。彼女を悪し様に断じるとは、それだけで刎頚に値する。そもそも、美しいだけで世界が滅びるはずがない。 世の女たちも磔刑にされた。理想の女が存在するのだから、不完全で醜く、我が侭な女は必要ない。地上から女が消えるのは時間の問題だった。 文字通り屍山血河を築いた果てに戦いは終わる。 敵将を討ち取った王を射殺した大臣を斬首した将軍を毒殺した軍師を刺殺した部隊長を焼殺した兵卒を絞殺した農夫を撲殺した我が子を抹殺した僕が最後の一人となったのだ。 血で真っ赤に染まった大地に人間はいなくなった。父も。母も。友も。兄弟も。妻も。我が子も。何もかも。 だが、それはとても瑣末な事だ。だって、僕には彼女がいるのだから。彼女以外、もう何も要らない。ありきたりな恋歌のようだが、それは本心だった。 彼女が優雅な足取りで歩み寄ってくる。祝福の抱擁か、それとも接吻か。 でも、どうして彼女は剣を握っているのだろう? 武器を構える姿ももちろん美しいが、何故だろう、背筋の震えが止まらない。 動けなくなった僕を見て、彼女は宝石のように眩い笑みを浮かべた。 「人間を滅ぼすのに天変地異なんて要らないわ。一太刀で十分よ」 そう耳元で甘く囁くと、彼女は僕の喉を掻っ切った。 僕の返り血で濡れる彼女も、たいそう美しかった。 PR
ふむふむ
今までの白武さんとは少々作風が違う気がしますね。
それに、タイトルから想像したのとだいぶギャップのある作品でした。 でも、これはこれでありだと思います。 それにしても、絶世の美女というものは、どうしていうも破滅をもたらす者の象徴として描かれるんでしょうね。
変化球
ちょっとダークな感じを目指してみました。
あと、800字以内という縛りもあったような気がします。 まさに傾国傾城の美女。自然界ではメスがオスを選ぶのが自然な姿であって、それ故に、オスが優秀な遺伝子を持つ配偶者を獲得するために他のオスを排除するというのは、生存競争の(以下略 いやまあ、要するに男は美人に弱いってことですかね。遺伝子的に。 |
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1985/12/07
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F県に棲息するナマモノ。
創作家になれるよう、亀の歩みで成長中。
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