日記、ところにより妄想。
× [PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。 朝露に濡れる森の中。
エーシェは三人の男たちと戦闘を繰り広げていた。
男たちの手には2mほどの長槍。国章の刺繍が施された外套を羽織り、軍用規格の硬革鎧で身を固めている。
――軍人だ。
貴族の私設兵団や民間が組織する自警団とは違う。 国家が保有する実力組織。国防のための軍事力。正真正銘の職業的戦闘者である。
エーシェは木々の合間を縫って迫る槍の穂先を躱し、時に長騎剣で弾きながら、何とか距離を取ろうと後退跳躍を繰り返す。 しかし、なかなか引き離せない。 軍隊行動の基本は行軍だ。彼らもまた軍人として、相当の鍛錬を積んでいるのだろう。 エーシェの見立てでは、彼ら単体の戦闘力はそこまで高くはない。自身を10とするならば、一人一人は2ないし3といったところか。一対一ならばエーシェの圧勝だ。いや、例え一対三であっても、数値の上では彼女に軍配が上がる。 ならば、何故エーシェは防戦を繰り返し、後退の一途をたどるのか。 「なんて練度の高い連携……! これが職業軍人……!」
エーシェの顔に焦りが浮かぶ。彼我の戦闘力の差を埋めるもの。それは『連携』だった。 集団の戦闘力は、その集まりに所属する人間の戦闘力の足し算だ。 交戦している彼らの場合、3+3+3=9となる。
だが、そこに連携という技術が加わると話は別だ。 人間には個人差がある。
性別。年齢。体格。性格。経歴。思想。嗜好――個人を個人足らしめるそれら個性が、集団行動では精度を鈍らせる摩擦となる。結果、集団は十全の成果が出せない。それが常だ。 それに対し、『連携』とは、個人の集まりである集団を一個の生物として機能させる技術だ。ある一つの目的のために個を捨て、より大きな個を作り上げる。そこに個人間における摩擦はなく、成果は十全のものなる。 故に、『連携』を行う集団の戦闘力は足し算ではなく掛け算で解を出す。 即ち、彼らの戦闘力は――3×3×3=27。 対峙しているエーシェからすれば、大型の肉食獣が襲ってくるようなものだった。 一人が切り込む。エーシェはそれを防ぎ、反撃へと転じる。しかし、それを見越した二人目が妨害。三人目が攻撃を完全に防ぎ切り、一人目が再び攻撃を仕掛ける。
……たった三人。
たった三人の連携で、辺境最強の冒険者と名高いエーシェが太刀打ちできずにいた。
軍人に高い単体戦闘力は必要ない。求められるのは連携とそれを崩さぬ鉄の心。それさえあれば、戦闘力など後からいくらでもついてくる。
「くそったれ!」
三位一体の獣となった男たちが猛然とエーシェに迫る。障害物の多い森では、彼女が得意とする魔法も十分に効果を発揮しない。逆に、彼女が森から抜け出た時、戦況は覆る可能性があった。故に、その前に決着をつけるつもりだ。 ――勝てる。 男たちは確信した。もうすでに獲物は疲弊している。森を抜ける前に追いつくことは十分に可能だ。あとは槍を長さを活かして囲めばいい。ほら、もう少しだ。もう少しで、あの最強と名高い女に、俺たちが―― 兵卒が英雄を下す。その事実に、視野が狭窄していたのは確かだった。 故に気づけない。
背後の茂みより飛来する、三つの風を切る音に。
「「「がっ……!」」」
立て続けに飛来した矢は、違わず三人の心臓を射抜いた。
異口同音の断末魔。『連携』を至上とした彼らの最後には相応しい。 男たちの沈黙を遠目に確認すると、エーシェは立ち止まった。 「いい連携だったわね」
滴る汗もそのままに、エーシェは茂みの奥に身を潜める狙撃手に微笑んだ。 だからなんだというコメントは受け付けません。 昨日、休暇を利用して温泉に行ったら急にティン!ときて、ズバッ!と書いたSS。 よく聞く「1+1が3にも4にもなる」みたいなことが言いたかった。 なんでエーシェが軍とやりあっているのか、その辺はまったく考えていません。 連携に関しては、言ってることは極端ですね。 調練でも連帯責任だしね。チームワークって大事。 PR |
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創作家になれるよう、亀の歩みで成長中。
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