鉄と水銀

もともと、要領の悪い人間である。

経験もなく技術もなく。不器用で、人付き合いも苦手。

しかし、それでも何とかやっていけるだろう、と心の中では思っていた。

もともと、どうしようもない小心者であり、善人である。

経験も技術も年月とともに蓄積される。
不器用で、人見知りが激しくとも、年月を経れば慣れてくる。

そうやって。遅々とした歩みで。変わっていけたら。

――だが。そんなものは幻想と知れ。

何を儚い夢を見ているのか。
貴様の本質を一番理解しているのは、他でもない貴様自身だろう。
貴様の思想、価値観、存在の在り方。そのすべてが秩序と相容れぬ混沌だ。
今更、適応しようなどと思うな。水銀に鉄が混じらぬのと同じこと。
絶えず形を変え、柔軟な対応を求められる社会（セカイ）が水銀なら。
貴様は、一度冷めてしまえば変質の叶わぬ鉄そのものだ。
無理に形を変えようと思えば、歪み、曲がり、折れるのは道理であろう？
貴様は鉄なのだ。それを忘れるな。
その身を鍛造（きた）え直す煉火など、もうありはしないのだから。

んー、何が言いたいかっていうと。
人間、どーしても合わない相手というのはいるものだなーと。
ここ数日、強く実感するのでした。

ちなみに、水銀に鉄が混じらないのは本当。
この水銀と鉄の関係を参考に、元素記号の仮面ライダー「Ｆｅ」というのを遥か昔に考えた。
水銀怪人を閉じ込める鉄の棺、みたいなイメージだったかと。
まあ、ニッケルとかタングステンとかも水銀には混じらないんですが。

けど、今考えると、これ設定が聖痕のクェイサーっぽい。